Garnet

Middle Title

01

濡れたアスファルトにネオン色が溶ける。

人肌の温もりが手に馴染む。

ゆらりと立ちのぼる劣情に思考を焼かれていく。

肌が月光を弾いて薄暗い部屋の中で白く浮かび上がる。

朧月に滲む黒影を追い掛ける。

落ちた赤椿の首を爪先で押しやる。

紙で切れた指に赤い玉が滲む。

ピンで展翅された蝶の鱗粉が妖しげに瞬く。

濡れた前髪を払い、指先で鼻梁をなぞる。

翼の名残という骨の膨らみを甘噛みする。

むせ返るような花の芳香に目眩がする。

夏の夜は理性の薄皮を一枚ずつ剥いでいく。

睨む眼が、薄闇で獣のように爛々とする。

手負いの獣のような荒い息遣いが響く。

底の読めない瞳を熱っぽく見つめる。

微かな震えを楽しむようにゆっくりと指先を舐る。

生い茂る葉と夜の香りに隠れ、背徳に浸る。

気だるげに差し出された手に軽く口づける。

点々と並ぶ灯りが異世界へ続く入口のようだ。

揺らめく蜃気楼に目をすがめ、額の汗を拭う。

窓から射し込む月光が床に紋様を描く。

耳に痛いほどの静寂の中、必死に息を殺す。

濃霧の中あてもなく彷徨う夢を見た。

隠し持った粉末をさり気なくグラスに落とす。

期待と緊張とがじっとり下腹を焦がす。

よれた写真のしわを伸ばし、じっと見る。

一瞬の沈黙の後、どう取り繕うか思考を巡らす。

鋭い音を立てて砕けた硝子が床に散る。

水滴が頬を叩く感触で朦朧とした意識が浮上する。

婀娜っぽい流し目に誘われ、ふらりと後を追う。

目尻を拭う温もりに頬を擦り寄せる。

仄かに期待して鳥籠を覗くもそこは伽藍堂だ。

刹那、奥底に追いやった記憶が脳裏をよぎる。

晩夏の空に入道雲が亡霊のように立ちはだかる。

脆弱な結晶に触れれば一瞬で溶けてしまう。

吐いた息の白さに寒さが一層沁みるようだ。

誰かの声に酩酊した脳を甘く揺さぶられる。

轟く雷鳴は何か良からぬ事の前触れのようだ。

枯れ落ちた花からは死の香りがする。

秋めく湖畔はどこか物寂しく映る。

哀愁漂う秋空に夜の帳が下りていく。

一面の銀世界が眩しく、思わず目を瞑る。

抗えない衝動に従って無声音で名を呼ぶ。

脱力したまま、膝裏を伝う汗を感受する。

ランプの傘をなぞると埃で指が薄汚れる。

月光に浮かぶ尖塔は黒い魔物のように物々しい。

02

まんじりともせず、水に変わった湯船で夜を明かした。

傘もささずに何処いくの。

学生時代に思いつきで書いた手紙を未だにとってある。

汗をかく麦茶のコップを指先でなぞる。

暑いとぼやく声を寝転がったまま聞き流す。

ドライヤーの音の向こうで何やら喚く声がする。

約束を反故にする旨の言い訳が電話ごしに酷く遠い。

会話の絶えた部屋にテレビの笑い声が虚しく響く。

嫌われるより、無関心でいられる方が余程つらい。

体を重ねれば情が移ると言われている。

出来たての傷から赤い血を舐めとった。

口を開けばネガティブなことばかり溢れる。

最近話題の映画をふたりで観ませんかと誘われた。

生存確認が結婚式の招待状なんてどんな冗談だよ。

そういえば今日の星座占いは最下位だった。

汗で湿った髪をくしゃりと掻き混ぜるのが好きだ。

いつもくだらない事で突っかかってくる嫌な奴だった。

呼び止めてきた男が誰だったか、記憶の底をあさる。

隣に横たわった男が柔い手付きで髪を梳く。

人として大切な何かがすこんと抜け落ちたような男だ。

初めて触れた頬はとても冷たかった。

浅い切り傷ほどじくじく痛む。

月並みな告白と返答で始まった関係だった。

ふいに懐かしい声を聞いた気がした。

猫を撫でる手付きが思いのほか様になっていて驚いた。

あんたが真っ赤な椿の花を咥えるところを見てみたい。

何事もないような澄まし顔で酒を煽る横顔を盗み見る。

ペンを握る指が意外に長くて感心した。

目が離せない人間というのが世の中にはいるものだ。

初っ端から何かと神経を逆撫でする奴だった。

切れた電話をぼんやりと見やった。

思えば数日前から何やら落ち着きがなかった。

調子外れな鼻歌は最近流行りのバンドの新曲らしい。

こんな時あの人ならどうするだろうと何時も考える。

第一印象はお互いあまり良くなかったと思う。

目的のない待ち時間は酷く退屈だ。

先生の手は魔法の手だとはしゃぐ声が好きだった。

今年の桜もあっという間に寿命を終えそうだ。

目が覚めた時、台所から聴こえる音が心地いい。

殴られた痛みで愛情を確かめる。

そんなに気に食わないなら失恋ソングでも作ってろ。

近づくほど手に入らないと思い知る。

あなたに許される境界線を確かめたい。

調子付くから優しくしなくていいよ。

あなたの遺骨でダイヤモンドを創りたい。

気を引くために子供じみた悪戯を止められない。

掛け違えた感情は修正する機会を失った。

消えていく鬱血の痕が寂しかった。

罪悪感であんたを縛れるなら道化にでもなってやる。

あなたに忘れ去られることが死ぬほど怖い。

首を食んだ犬歯が肉を裂く妄想をする。

憧憬と恋愛を同一視するな。

行けもしない旅行をあれこれ想像した。

滲んだ声を背中越しに聞き流した。

アパートの室内に風鈴を吊るす気弱さが好き。

濡れた紫陽花ごしに顔も見ないで別れを告げた。

満開の桜が誰よりも似合うひとだった。

使わない二人分の食器を捨てられずにいる。

知らない顔で微笑まれて 立ち入れない線を引かれた。

真っ直ぐな眼差しを受け止めるのが苦しかった。

やり直したいと縋る声が情けなく滲む。

皮膚一枚で隔てられた他人であることが煩わしい。

知らぬ女を連れているのを見かける度 胸が痛んだ。

物にも人にも執着しない貴方が怖い。

報われない感情をあなたのせいにしてしまいたい。

移り気なあんたを引き留める術を知らない。

言葉がなくともこの関係に確かな証が欲しい。

同じ墓に入りたいとか言ったらきっと笑われる。

貴方の一瞬でも預けてくれるなら構わなかった。

お前の知らない所がないように染め直して。

寂しい思いはさせないと豪語したのが馬鹿みたい。

気まぐれな男の一挙手一投足に振り回されている。

顔を合わせれば口論ばかり 会わなければ気に掛かる。

正反対なのに妙に惹かれ合う不思議な関係。

お前だけだよと嘯く口が憎らしくて掌で塞いだ。

知らない表情に遭遇する度 据わりが悪くて困る。

歳を重ねるほど臆病になる。

壊れた腕時計をいつまでも捨てられずにいる。

猫になって足元に丸くなる妄想が止められない。

切れ長の眼が猫のように細まる様が愛おしい。

別れた日から好きでもない煙草が手放せない。

剥き出しの感情は熱くて苦くて煩わしい。

知られたくない秘密ほど ばれた時の妄想は楽しい。

行き過ぎた献身を求められるほど溺れていった。

傷口を抉られるほど生きていると感じる。

痛みを擦り寄るような恋をした。

あいつが居なくてもそれなりに楽しいけれど。

祈るような目で見られることが何よりも苦痛だった。

夕焼けに染まる金髪をいつか触りたいと願っている。

あなたの初めて、あるいは最後の人になりたかった。